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広報部コラム『日本演出者協会とは』桒原秀一

考えてみれば、日本演出者協会に入ってもう20年近くになる。きっかけは、先輩からの紹介だった。

当時の私は、演出者協会が何をするところなのかも、正直よく分かっていなかった。ただ、「演出家が集まっているらしい」ということと、「年会費がかかるらしい」ということだけは分かっていた。そして20代の私にとっては、後者のほうが圧倒的に重要だった。

会費なんて払うお金はない。本気でそう思っていた。

そもそも演出家という仕事は、なかなか孤独だ。

特に小劇場で活動していると、自分で企画を立て、人を集め、作品をつくり、それを誰かに認めてもらって、ようやく次の仕事につながっていく。

劇団や大きな組織に所属していなければ、当然、企画にかかるお金だって自分でなんとかしなくてはいけない。

「演出家」と聞くと、稽古場の真ん中で偉そうに腕を組んでいる人を想像するかもしれないが、実際にはその前に、劇場を探し、出演者に連絡をし、予算表を眺め、残高を見てため息をついていたりする。

しかも、稽古場に演出家はだいたい一人しかいない。

つまり、自分の演出が良いのか悪いのか、何が足りていないのか、放っておけば誰も教えてくれないのである。観劇の際に演出家と話したり、自分とは違う方法に触れたりしなければ、あっという間に井の中の蛙になる。

しかも、作品をつくれればそれでいいというわけでもない。ハラスメントを始め、演出家には現場をつくる人間として、多くの知識や責任が求められる。

一方、演出家という肩書きは誰でも名乗れる。だからこそ「演出家であり続ける」ことは、昔よりずっと難しくなっているようにも思う。

そんな私にとって、日本演出者協会という場所は、思っていた以上に大きな存在になった。さまざまな事業に関わったり、現在は広報部で活動したりしながら、本当に沢山の演出家と出会った。演出家同士が集まれば、結局、芝居の話になる。

「最近どう?」「どこで稽古してる?」「あの劇場どうだった?」「あの俳優さん知ってる?」「あの助成金、今年変わったらしいよ」

気がつけば、仕事の話なのか世間話なのか分からなくなっている。でも、その中にものすごく大切な情報が混ざっている。誰かの一言に救われ、誰かの失敗談に勇気づけられることもある。

20代の頃の私は、「出会う」ということの価値を、あまり分かっていなかった。というより、そんなことを考える余裕がなかった。

次の公演をどうするか。稽古場代をどうするか。お客さんをどうやって呼ぶか。

とにかく目の前の公演を成立させることで精いっぱいで、生きることと芝居を続けることが、ほとんど同じ意味だった。けれど20年近く経って振り返ってみると、不思議なものである。

あの時に出会った人に仕事を紹介してもらった。あの時一緒に公演した人に困った時に助けてもらった。あの時聞いた言葉が、何年も経ってから突然、自分の中で意味を持った。

そうやって考えてみると、今の自分は、自分一人でここまで来たわけではないのだと、つくづく思う。

人に出会い、助けられ、励まされ、ときには腹を立て、ときには酒を飲みながら芝居の愚痴を言い、そういう時間の積み重ねの先に今がある。少なくとも、一人で演出をしている人間にとって、「自分以外にも、こんな面倒くさいことをずっと考えている人間がいる」と分かるだけでも、少し救われる。

もちろん、組織である以上、いろいろな人がいる。全員と気が合うわけではない。演出家ばかりが集まって、全員の意見が一致したら、むしろそのほうが怖い。ただ、ひとつ思うことがある。組織というものは、人間のためにあるべきだということだ。

人間が組織のために存在するようになってはいけない。

これは演出者協会に限った話ではない。国だって、会社だって、劇団だって、本来はそうなのだと思う。だから日本演出者協会も、誰か一部の人のための場所ではなく、入会した一人ひとりのための場所であってほしい。

若い演出家も、ベテランの演出家も、東京で活動している人も、地域で活動している人も、困った時に誰かに相談できる。知らなかったことを知ることができる。そして、新しい誰かに出会える。そんな場所であり続けたらいい。

最初は、「会費なんて払うお金ない」と思っていた私も、広報部に入り、あれこれ活動しているうちに、いつの間にか年会費を投資と考えるようになっていた。そして、20代の頃に始まった人とのつながりは、今になって自分のところへ返ってきている。

だから、もし今、一人で作品をつくっている演出家がいるなら、一度こちら側に来てみませんか、と言いたい。

何かものすごくいいことが起こるとは約束できない。仕事が急に増えるとも言えない。

会費だって、ちゃんとかかる。でも、誰かに出会える。そしてその出会いが、10年後、20年後、思いもしなかった形で自分を助けてくれることもある。

というわけで、ここまで長々と書いてきたが、結局何が言いたいのか。

日本演出者協会に入りましょう。そして、できれば広報部にも入ってください。待っています。