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『地域で活躍する演出家シリーズ』岡田 敬弘

岡田 敬弘 OKADA Takahiro

香川県出身、香川県在住。2011年に株式劇団マエカブ設立以降、演出・劇作・制作を中心に演劇活動を続けている。2023年に株式会社ARTFITを設立。体操と舞台芸術を組み合わせた子ども向けのスクール事業(ブレインキッズ体操教室)や小劇場(絵本の劇場カメレオン)の運営を行っている。また、高松市の地域アーツカウンシル(クリエイティブ・ポート高松)のプログラムオフィサーとして文化芸術団体の中間支援にも携わっている。

演劇を地域の文化にするために

― 演出家・岡田敬弘の地域への取り組み ―

私にとって演劇とは、舞台の上だけで完結する芸術ではありません。

人と人をつなぎ、子どもたちの想像力を育み、地域に新しい対話を生み出す「社会のインフラ」だと考えています。

しかし現実には、演劇は「一部の人だけが楽しむ特別な文化」と受け止められることが少なくありません。本来、演劇は音楽、美術、身体表現、言葉など、多様な芸術が融合した最も自由度の高い表現であるにもかかわらず、社会との距離ができてしまっている。この違和感こそが、私の活動の原点です。

その思いから2011年に「株式劇団マエカブ」を設立しました。

劇団にも株式会社のような経営感覚が必要だと考え、「株式劇団」という名前を掲げました。作品を上演するだけでなく、地域や企業、教育機関など異業種との連携を積極的に行い、演劇が社会の中でどのような価値を発揮できるのかを実践し続けてきました。

これまで、劇場だけではなく、うどん店やバー、小学校、老人ホーム、商店街など、日常のさまざまな場所で作品を上演してきました。

劇場へ人を呼ぶのではなく、演劇の方から地域へ出向く。

その積み重ねによって、「演劇は難しい」「自分には関係ない」というイメージを少しずつ変えていきたいと考えてきました。

私が目指しているのは、演劇を鑑賞する人を増やすことだけではありません。

演劇を通して、人が互いを理解し、想像力を育み、地域の中に新しいコミュニティが生まれることです。

その考えは教育活動にもつながっています。

2019年に立ち上げた体操教室「ブレインキッズ」では、演劇の考え方を取り入れた独自の教育プログラムを実践しています。

一般的な体操教室が技術の習得を目的とするのに対し、ブレインキッズでは「運動」「表現」「創造」の三つを柱としています。

子どもたちは大型ブロックを使って自由に作品をつくり、身体を動かしながら友達と対話し、自分なりの表現を見つけていきます。

ここでは「できる・できない」で子どもを評価することはありません。

演劇の創作現場では、一人ひとりの発想や個性を尊重しながら作品をつくります。その考え方を教育にも応用し、講師は教える人ではなく、子どもの挑戦を支えるファシリテーターとして関わっています。

指導には劇団の俳優やダンサーも参加しています。

俳優は「表現する人」であると同時に、「相手を受け止める人」でもあります。

相手の気持ちを想像し、その人らしさを引き出す力は、教育の現場でも大きな価値があります。

私は、演劇人の社会的価値をもっと広げたいと考えています。

舞台だけではなく、教育や福祉、地域づくりなど、さまざまな場面で演劇人が活躍できる社会を実現したいと思っています。

その挑戦の一つが、2026年に高松市田町商店街に開館した約40席の小劇場「絵本の劇場カメレオン」です。

香川県では約10年ぶりとなる民間小劇場です。

私がこの劇場をつくろうと思った背景には、地域文化に対する危機感がありました。

高松市文化芸術財団「クリエイティブ・ポート高松」のプログラムオフィサーとして地域の舞台芸術に関わる中で、多くの劇団が高齢化し、このままでは地域文化を担う人材が減少していく現状を目の当たりにしてきました。

新しい表現者が育つためには、まず挑戦できる場所が必要です。

その場所を地域の中につくりたいという思いが、小劇場開館へとつながりました。

劇場名に「絵本」を入れたのも、そのためです。

「小劇場」という言葉には、一部の演劇好きだけが集まる場所という印象があります。

私は、子どもから高齢者まで誰もが物語に出会える入口をつくりたいと思いました。

だからこそ、誰もが親しみを持てる「絵本」という言葉を劇場名に冠しました。

また、「カメレオン」という名前には、一日の中で姿を変える劇場という意味を込めています。

午前中は親子カフェ、昼間は地域イベントやワークショップ、夕方は体操教室、夜は演劇公演や映画上映、企業研修など、多様な活動が行われます。

劇場を「公演がある日にだけ開く場所」ではなく、人が日常的に集まり、交流し、創造が生まれる地域の文化拠点へと育てたいと考えています。

私が目指しているのは、一つの劇場を成功させることではありません。

劇場を起点として、文化・教育・経済が地域の中で循環する仕組みをつくることです。

子どもが劇場で物語と出会い、表現する楽しさを知る。

その子どもが成長し、今度は地域で新しい作品を生み出す側になる。

その作品をまた次の世代が観る。

そんな文化の循環が地域に根付けば、地方でも持続可能な文化は育っていくと信じています。

今後は学校教育への演劇ワークショップの導入や、部活動の地域移行に伴う演劇活動の受け皿づくり、さらには企業研修への演劇的手法の活用など、地域との接点をさらに広げていきたいと考えています。

演劇は、作品を発表するためだけのものではありません。

人を育て、地域をつなぎ、社会に新しい物語を生み出す力があります。

地方だから文化を諦めるのではなく、地方だからこそ文化を地域づくりの中心に据える。

その実践を積み重ねながら、私はこれからも演出家として、舞台の外にも新しい表現の場をつくり続けていきたいと考えています。

また、「絵本の劇場カメレオン」は、地域の文化拠点であると同時に、全国の演劇人が挑戦できる劇場でもありたいと考えています。

特に県外からお越しいただく劇団・アーティストの皆さまには、会場を貸し出すだけではなく、広報や制作面でのサポート、宿泊先の紹介、地域とのネットワークづくりなど、それぞれの活動に応じた支援を行っています。また、作品や団体の状況に応じて、固定の貸館料だけでなく、チケット収入を分け合うレベニューシェア方式など、柔軟な利用形態にも対応しています。

劇場は「借りる場所」ではなく、「一緒に作品を届けるパートナー」でありたい。それが私たちの考えです。

四国での公演やツアー、創作活動を検討されている方は、ぜひ一度「絵本の劇場カメレオン」を訪れていただければと思います。